新任の西村晃です。
2007年10月。私は山手線に乗ってケータイでニュースチェックをしていました。「バイオをやらせてくれないなら行かないって言ってやったんだ」品川から乗ってきた若い二人の男の会話が耳に入ってきました。バイオと聞いて一瞬私はバイオテクノロジーのことかと思いました。私が目を上げると、会話の主は一見してリクルートスタイルと分かる大学生でした。しばらく話を聞いていて、バイオとはSONYのパソコンのことだと分かってきました。会話の内容から推測するに、SONYに会社訪問に行って是非来て欲しいと言われたけれど、パソコンの仕事に就かせると会社が確約してくれなければ行ってやらないと、言い放ってきたようです。
これは今から15か月前の話です。ずいぶん強気だったんですね。当時さえ、なにも社会を知らない学生が身の程知らずで、いい気なもんだと、私はあまりいい気はしませんでした。いま就職を巡る状況は激変しています。重要なことは、あの頃の「就職売り手市場」の時の学生がとびきり優秀であったわけでもなく、また氷河期と言われる時期なかなか就職が決まらない学生が優秀でないということでもないということです。たまたま巡り会わせで就職活動の時期の景気が、人生の旅立ちの明暗を分けてしまうのはため息がでるばかりです。
就職狭き門で、悩む学生の皆さんに敢えて言っておきたいことがあります。売り手市場の時入った人は、概して企業の中では評判が悪いものです。なまじ自分には実力があると勘違いをしているから、謙虚に社会勉強をしなければならない新人時代に真面目に取り組もうとしないのです。あるいは社会人になってすぐ、こんなはずではなかった、もっといい会社に俺は入れたはずだ、などと思い込み、安直に転職しようとして失敗したりします。
人生は長い。就職活動の結果で一喜一憂することなかれ。それよりも、まだ浅い人生経験しかない学生ゆえに、現在輝いて見える会社が将来も輝いているに違いないと錯覚することのほうが心配です。企業の寿命は30年と一般に言われますが、サラリーマン人生は40年近くあることを肝に銘じておくべきです。
社会のなかにおける企業の存在を客観的に把握する能力を身につけるのも、新しい学部、サービス創造学部で学ぶ意味だと思います。
がんばりましょう。