昨日、経済産業省において関東地区予選が開かれ32大学が全国大会出場に挑戦しました。「千葉ジェッツプロジェクト」は健闘むなしく奨励賞。結果報告を終えて、プレゼンを担当した学生たちから発せられた言葉は、「悔しいけれど、自分たちより頑張った他大学の学生たちの存在を率直に認め、今年度足りなかった部分を修正して再チャレンジしたい」というもの。まっすぐに成長し続ける学生たち姿に接し、教員としての気持ちを新たにしました。
以下は、昨日のプレゼン原稿です。プロジェクトリーダー高梨愛子さん、マーケティングGリーダー石神丈治君、プロモーションGリーダー関口郁也君の順番でプレゼンテーションしました。
【高梨愛子】本物のプロスポーツ球団とがっぷり組んで観客動員やイベント企画が出来るなんて1年前の私には考えもつかない夢物語です。この夢物語のきっかけは、昨年夏の集中講義、「スポーツエンターテインメント荒木塾」に出席したことでした。千葉ロッテマリーンズのファンサービス向上を指揮したことで知られ、さらにパリーグ全体のマーケッティング戦略を策定・実行して実績を上げた千葉ロッテマリーンズ元執行役員事業本部長の荒木重雄特命教授から直接にリアルなスポーツビジネスの話が聴けると言うので、私を含めて約30名の学生が集まりました。荒木先生の話は、分かりやすく、リアルな迫力、私たちには想像もつかないサービス創造のアイディア満載で、私たちはすぐにスポーツビジネスの虜になってしまいました。何回目かの荒木塾にプロバスケットボールチームを千葉内で立ち上げるために頑張っている若干26歳の女性がゲストスピーカーでいらっしゃいました。外資系金融機関を退職し、自ら退路を断って夢を語るその人は、現在の千葉ジェッツの取締役広報部長で、私たちのプロジェクトを指導してくださっている蒔平ゆき特命講師でした。夏休みにもかかわらず荒木塾に参加した30名の学生は蒔平さんの夢を追いかける必死の姿に接し、全員が雷にあったような衝撃を受けました。一緒にプロバスケットボール球団づくりをしたい。昨年秋、蒔平先生が夢に見たプロバスケットボールbjリーグへの参加がリーグで認められた後の球団名記者会見場に、すでに私たちは同席していました。そして昨年暮れに行われた次年度の学部オフィシャルプロジェクト決定審査会で「千葉ジェッツプロジェクト」発足についてのプレゼンを行い、審査にあたった教授たちから全員賛成の支持をいただき、今年4月「千葉ジェッツプロジェクト」が正式に発足し、正式科目「プロジェクト実践」のなかの6つのオフィシャルプロジェクトのひとつとして活動をスタートさせました。
プロジェクトでは、吉田学部長のほか、荒木特命教授、そしてなんと蒔平特命講師が加わって指導いただくことになりました。参加学生は昨年の荒木塾に参加した学生を中心に30名。何から活動を始めていいかわからないまま、学生一人一人が県内初のプロバスケットボールチームとの連携に高揚していました。そんな学生たちから、大学体育館で公式戦を開催できたら面白いという声が出始めるのに時間はかかりませんでした。学部長や千葉ジェッツの努力もあり、大学は10月29・30日の大学祭期間中に体育館で公式戦2試合を開催することを学部長会で決定してくれました。蒔平先生から、「あなたたちに公式戦2試合を預ける」と言われた時は「凄い、ヤッター」と叫んでしまいました。2試合で合計4000名の観客動員をめざし、試合当日の試合会場運営を千葉ジェッツのフロント陣と一緒に共同プロデュースすることになりました。私たちは、大学キャンパスを人口6000人の街に見立てて、組織作り、戦略、戦術づくりをすることになりました。このへんまでは、マーケティングや経営学で学んだこと、私たちの若いパワーで何とかなると考えていました。しかし、リアルなスポーツビジネスは、そんな生易しいものではないことにすぐに気がつくことになりました。
【関口郁也】私たちは、経営学で学んだ組織づくりから始めました。ステークホルダー、戦略に基づき、プロジェクトを「マーケティングクループ」、「プロモーショングループ」、「IT・広報グループ」にの3つに分け、各グループのリーダーを選任し、全体のプロジェクトマネジャーが各チームを調整統括することにしました。
しかし、グループで話し合いをするプロセスで、さまざまな課題が明らかになってきました。たとえば、「千葉ジェッツは学生間でもほとんど知られていない。どのような方法で認知度を上げればいいのか」、「千葉ジェッツから自由に販売していいとして提供された合計200枚チケットにどのように値段設定すればいいのかわからない」、「大学にさまざまな申請をすることが必要にもかかわらず、どこに何を申請すればいいのかわからない」、「体育館は体育の授業の為の施設で、スポーツエンターテイメントの施設ではない」、「ポスターを作成して貼りだしているだけでは集客は見込めない」、「メンバー間のコミュニケーションはどのようにとればいいのか」など、など。私たちは、スポーツビジネスに夢を抱いていたものの、それを形にして、実行するための知識や知恵を持ち合わせていないことに気付いたのです。焦れば焦るほど、何が何だか分からなくなります。夢を語っていたメンバーのモチベーションが減退したり、責任を持った行動をしなくなったり、グループやプロジェクト全体の意思決定を誰がどのようにすればいいのかもよくわからない状況がしばらく続きます。時間が流れ、リーダー達を中心に焦りはさらに強まります。とうとう、定期試験を終了して、夏休みに突入してしまいました。
そんな状況にあって先生たちからのアドバイスもいただき、各グループが少しづつ動き始めました。威力を発揮したのが24時間にわたってメンバー同士をつなぐfacebookです。すべてのコミュニケーションをfacebookで行い、30名のメンバー達の間の共通理解を促進させます。すべてのコミュニケーションを先生たちにも読んでいただき、タイムリーにアドバイスや厳しい指導を入れていただきます。コミュニケーションやメンバー間の共通理解の重要性、具体的な知識や知恵を有する人材からのアドバイスや指示の重要性をメンバー間で共有するのに時間はかかりませんでした。
マーケティンググループは、アンケート調査、学内での千葉ジェッツ説明会、チケット販売を企画実行しました。プロモーショングループは、学内で学生起業したホットドック屋と組んで千葉ジェッツのプロモーション用に開発したスパイシーホットドックの企画販売、体育館の照明や音響装置の設置企画、そしてIT・広報グループは、ポスター作製、プロジェクト専用HPの立ち上げ&管理、プレスリリースなどを行いました。
「千葉商科大学の体育館が決選場にかわる」というポスターは、複数の素案から選んだもので、学内に千葉ジェッツのポスターとともに200枚貼り出し、PR効果はかなりのものだったように思います。しかし、体育館前で販売したチケットが思ったように売れない日々が続きました。1枚のチケットを売ることの厳しさを初めて実感しました。4千名の観客動員なんて夢だったんだ。
【石神丈治】その時、先生たちから試合開幕の3週間前、「まだまだ何もやってないじゃないか。観客動員の実績は出るのか。リアルなビジネスでは、出来ないでは済まされないんだ。学内の学生、教職員をセグメント化して担当者を決め、個別訪問をするなんて当たり前。それすらもやっていない。体育館前でチケットブースをオープンしているだけではお客は確保できないぞ。体力、気力で最後まで頑張れ」と厳しいアドバイス。先生たちも、新聞社の記者やTV局の報道カメラが教室で取材中にもかかわらず、なりふり構わずの態勢。「まだまだオレたち甘いな。まだやれる。」と思い直し、そこから毎朝7時から、夜は6時からJRや私鉄の駅頭で声がかれるまで千葉ジェッツをPRし1万枚のチラシを配布しました。空いた時間を見つけて周辺地域の家庭にチラシのポスティングまでしました。学内では、手分けをしてゼミ、体育会、事務所、同窓会などを戸別訪問営業もしました。
試合前日、千葉ジェッツと協力し、体育館をプロ公式戦用に準備し、試合当日、観客が体育館に入ってきたときには疲労困憊でしたが、なんとかここまでたどり着いたというのが正直な感想。観客数は、2試合で合計2千2百名。4千名には届きませんでしたが、千葉ジェッツ公式戦2試合の観客動員や会場運営を通じて多くのことを学ぶことができました。
経営学で学んだ組織構造、戦略づくり、組織内コミュニケーション、責任、権限、リーダーシップなど、マーケティングで学んだ4P、価格決定、広告、顧客満足など、さらにプロジェクトマネジメントで学んだプロジェクトの目的設定、工程表など、荒木塾で学んだプロスポーツ球団による多様な成功事例など、十分に活用できなかったことばかり。今思えば、それらを有効な手掛かりとしていればもっと出来たことがあったと反省しています。今回のプロジェクトを通じて私たちが理解できたことは、こうした解決すべき課題の発見と共に、残された大学での学習の時間を目的意識をもって「学問から学ぶ」ことの重要性です。
嬉しかったことは、千葉ジェッツが2日目の試合のハーフタイムに、学生メンバー一人ひとりの名前を呼んでチアリーダーたちが創る花道を駆け足でコート中央に呼び出してくれたこと。足が震えながらも、体が浮き、夢心地でした。また試合終了後の報道各社のインタビューに対戦相手の監督が、「大学とこうした取り組みをしていることが素晴らしい。われわれも見習いたい」とのコメントを出したことを翌日の新聞で読んだ時でした。
「まだまだ終わらない、千葉ジェッツプロジェクト」が今の私たちの気持ちです。今年度も、千葉ジェッツは戦い続けていますので、私たちの活動も現在進行中。さらに来年は、もっと成長して、千葉ジェッツプロジェクトを動かしていきたいと考えています。学部長から「動いた距離だけ、考えただけ、汗を流しただけ、人間は成長する」と指導いただいています。来年度の私たちのプロジェクトの取り組みに期待ください。そして千葉ジェッツを一緒に応援ください。本日は、私たちのプレゼンテーションをお聞きいただきありがとうございました。