古書店街をめぐる

サービス創造学部の清水です。

先日、知の宝庫ともいえる神田神保町の古書店街をうろうろしてきました。神保町付近は、皆さんご存知のように昔から大学、ビストロ、古書店、はては楽器屋、ジャズ喫茶とまるで日本版カルチェ・ラタンのような雑多な趣がある場所です。私も学生時代からこの辺りを散策してきました。

靖国通りを挟んで、北側には数多の飲食街、そして南側には老舗の古書店が軒を並べてお客さんが来るのを待っています。この辺りの古書店を学生の皆さんは覗いてみたことがあるでしょうか。昨今では、顧客重視の姿勢が金科玉条のごとく説かれ、お客に対する姿勢が柔らかになった店が増えましたが、ここには、今でも昔ながらの職人気質な老舗が残っています。今日はその雰囲気をお伝えしましょう。

目抜き通りからほんの少し奥まったところにあるK書店は、図書館からの依頼も多い専門店です。のみならず、その専門店ぶりを外観にはっきり表出しているがゆえに、一見客などほとんど訪れません。

- ×××の全集はありませんか? -

人気のない帳場の奥に、古い調度品と一体化したような主人は、毛糸の帽子を目深にかぶり、眼鏡の奥から鋭い眼光を投げつけ言うのです。

- あるけど、買うの?高いよ -

- ええ、あれば買いたいのですが・・・ -

- ×××だったら単行本で十分。全集なら○○○にしときなさい。配送料はまけておくから -

主人はそう言いながら、脇の書棚から十数冊の本をやおら引き出し、私に渡します。ぱらぱらめくると、まあまあ面白い。

小一時間もすると、神田の外れの裏路地に夕暮れが訪れます。慌しさに急きたてられるように店を出ると、たちまち仕事帰りのサラリーマンが目につきます。結局、最初に買おうと考えていた本は手に入れず、店主に言われた本を買ってしまったわけです。

- これはこれでいいのかな -

古きよき時代、レコード店ではお店がお客様の好みを聞いて、商品を薦めていたといいます。その頃は、時間の流れもゆったりしていたのでしょう。現代のように、個人主義が幅をきかせた世の中では、過剰な(押しつけがましい?)サービスは、よもや無用の長物であるやも知れません。しかし、こういった暖かいサービスもまた、”いいものだ”なんて思うのです。

皆さんはいかがでしょうか。