実学と教養

サービス創造学部 准教授の清水です

-  最近は、教養のある人材がへったな・・・  -

だいぶ昔になりますが、勤めていた会社の経営者のひとりが車の中で呟いた言葉です。その方とは縁遠くなり、いまや真意を確かめることは出来ません。しかし、辛酸をなめてトップへ君臨した逸材が、単に”勉強ができる人間”を”教養ある”などと表現することはないことくらい、ある程度社会経験を積んだ人間であれば、誰にでも気づくはずです。

そこで今日は、教養について考えてみたいと思います。

教養を辞書でひくと、学問や知識とともに、社会生活をおくる上で不可欠な文化的知識などと書かれてあります。広く、実学として知られている教養としては、この”文化的知識”が重視されるのです。昔のビジネスエリートには、幅広い文化的素養が求められました。ビジネスに関して言えば、経営や法律などの社会的な実学にくわえ、それ以外の知識・・・、文学、音楽、そして歴史に関することなど、多くのトピックについて懇談されたものです。例えば、アップルコンピュータのカリスマ経営者だったスティーブ・ジョブズ氏は、自身も芸術家肌であり、また側近にもそういった感性を求めていたとの逸話がありますが、ビジネスの発想に、ビジネス以外の素養が有益であることの証ともいえそうです。

はるか昔・・・

英国紳士たちの間では、ディナーの後に、最高のブランデーを嗜み、シガーを燻らし、語らいを続ける光景がしばしば見られました。現代では信じがたいことですが、男性優位で進められた会話には、政治、経済に始まり、文学、音楽などの芸術論など・・・、幅広い事柄が俎上にのせられていたようです。そして時折、スローでメロウな時間と空間から、より素晴らしいアイデアや決断が編み出されてきたのでしょう・・・。ただし、この辺りは、想像ですが。

というわけで、学生の皆さんも、大学にいる間は、専門的知識の勉強に励む一方、幅広く教養を身につけて欲しいと思います。幸い、サービス創造学部には、オリジナリティ溢れるカリキュラムがありますし、大学には充実した蔵書を誇る図書館もあります。これを使わない手はありません。そして、学んだ内容を様々な場面で役立ててみて下さい。知識は経験として身につけなければ、決して真の教養とはならないとおもうのです。