桜の季節に想う


世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし ― 在原業平

千葉商科大学サービス創造学部で情報科目を担当している,神保雅人です。

新入生の皆さんも,既に授業が2週目に入っているので,大学には徐々に慣れてきたことでしょう。入学式の後に咲いた桜ももう殆ど散りましたね。

さて,冒頭の和歌ですが,高等学校の古文の教科書では『反実仮想』の実例としてよく取り上げられるものです。この季節になると毎年,綺麗な桜が咲き誇り,その花を愛でることが出来るけれども,その散りゆく様の儚さに心乱れるという想いを歌い上げています。(「いっそ桜が無かったらのどかな心持ちでいられるのに」というのは,レトリックというもので,好きだからこのような想いを抱くという気持ちをひねって表現しています)

この桜の散り方を『潔い』と言って,武士道と絡める考え方がありますが,それは,江戸時代に世の中が安定して武士が官僚化した為に変質した武士道です。戦乱の世の中では『とにかくしぶとく生き残って再起を期す』という考え方が一般的です。(例えば,中国の故事成語には『臥薪嘗胆』という言葉があります)

桜は散っても,また春が来れば咲き誇ります。これは,新入生だけでなく上級生の諸君にも言いたいことですが,何かを実現する為の強い意志と粘り強さとを身に付けてください。それには,学生プロジェクトやゼミナールでの経験がきっと役に立つと思います。